白い杖を持った方のこと

先日、病院帰りに町を歩いていたところ、白い杖を持った方が信号前で方角さえ分からない様子であちこち向きを変えながら進むべき方向を探っていた。白い杖の方を見かけることは時々あるけれど、大抵は弱視のようで方角は把握している。ところが今回見かけた方は横断歩道とは真逆の方向に進もうとしていた。あまりに危険なので、見かねて道案内を買って出た。私以外にも心配して声をかけようとしていた方がいたけれど、若いカップルの方々だったので、急ぐ用事もない自分の方が適役だろうと思い、そのまま道案内を引き受けた。実は身体障害者の方にあまり直に触れ合ったことがない。それまではどういう風に接して良いか分からない戸惑いを引きずっていたが、その時は地元だったこともあり、多少は自分でも道案内のお役に立てるだろうという自信をもって「どちらまで行かれますか」と声をかけてみた。相手の口調がはっきりしていたこともあり、自分でも驚くほどすんなり数百メートル先のバス停まで案内することができた。知らない人にいきなり腕を組むなんてこと、相手が普通の人であれば当然できないが、「安全第一」を考えて行動すればまったく恥ずかしがる気持ちも起きない。むしろ相手の方が引いていないか?と心配になるくらい。今になって知ったが、そうやって腕を組んで道案内する方法はさして間違っていないらしい。ただし、日本点字図書館の情報によると、目の不自由な人に自分の腕を掴んでもらって案内するのが最適らしい。あとこちらのツイートによると、「もう少しゆっくり歩いて」とリクエストされることもあるらしい。私が案内した方は、眼球がなかった。正直、サングラスの下に垣間見えたその方の素顔を怖いと思ってしまったのは事実。だが、私も人から知られて引かれたら傷つく様々な要素を持っているのも事実。形態が違うだけで、お互い様なのだ。

「いっしょに歩こう」目の不自由な人の誘導方法を簡単にまとめたリーフレットがダウンロードできるようになりました|日本点字図書館